この茶盌は、『老浪(おいなみ)』という古い朝日焼の茶盌を意識して作っています。
大正名器鑑に掲載されているこの有名な茶盌を、私は拝見する機会をまだ得たことはないのですが、先代はその形を写した茶盌をよく作りました。
老浪の特長は、その形と薄い刷毛目にあります。
形は、少し歪んでいるのですが円い茶盌を半分だけ歪めて、片側は円形。片側は方形。という不思議な形です。
そこから想像するのは遠州の好みです。
円と四角で構成される七宝紋(花輪違い紋)は、小堀家の家紋でもあり、遠州が好んだ文様です。
この茶盌の形には、そんな遠州の好みが反映されているように感じます。
老浪は、追い波の意でしょうか。薄い刷毛目が波のように見えることから名付けられたと想像します。
父はよくこの形の茶盌を作りながらも、薄い刷毛目の作風までは写しませんでした。もしかすると名
盌と云われる茶盌への父なりの配慮であったのかもしれません。
しかしながら、私はやはりその独特の薄い刷毛目の表情にも惹かれ、少し寸法を違えながらも形と、薄い刷毛目の両方の特長を写して作りました。
一見、素朴な茶盌ですが遠州好みらしい、さりげなく作為の入った茶盌となったと思っています。
サイズ Φ125×h75 mm
素材 紅鹿背(宇治の陶土)
釉薬 透明釉
焼成 玄窯(登り窯)
箱 木箱 ※受注後に制作、約二週間
価格 198,000円(税込)