朝日焼の鹿背(かせ)や紅鹿背(べにかせ)と呼ぶ作風は、その源流は高麗茶盌の御本手にあります。おそらく、茶の湯の世界での高麗茶盌の流行と共に、その写しを試みたのが始まりでしょう。宇治の土はそれに叶った御本のよく出る土です。
しかしながら、やはり土というのはそれぞれの個性があり、また宇治という都に近い土地柄、遠州の好み、そうったものも影響したと思いますが、朝日焼の御本手はより優美で複雑グラデーションを持つ独自の風合いとなって参りました。
それでも、窯の中で、ほんの時折、高麗茶盌のような御本の表情を見せてくれることがあります。この茶盌がそういう茶盌です。形は井戸形ですが、その表情は斗々屋(トトヤ)茶盌や、御本茶盌に見られるような雰囲気です。
これも窯の中で、低い段に入れたもの。火に面した方はしっかりと釉薬が溶けていますが、その反対となった方は、少し溶けが甘く、一つの茶盌の中でも見た目の表情も手触りも違って、また、そこが魅力的です。茶盌の内外に見られる釉のなだれも面白く、見どころの多い茶盌。
何度も手で撫でまわしたくなる茶盌です。
サイズ Φ137×h80 mm
素材 紅鹿背(宇治の陶土)
釉薬 透明釉
焼成 玄窯(登り窯)
箱 木箱 ※受注後に制作、約二週間
Price 209,000 JPY