この茶盌の鹿背の景色は、とても変化に富んでいて面白いです。
ひっくり返して高台側から眺めると、高台の脇にまるで天の川のように斑点模様が帯状に連なり、その両側は薄黄蘗(うすきはだ)色と呼ぶような鹿背土独特の薄い黄色が広がります。
茶盌の腰部には、釉薬掛けの時の指の跡が、それぞれ一ヶ所と反対側に二ヶ所あり、一ヶ所の方は緋色がよくついてアクセントになりながら、そこを境に片身代変わりの景色が広がります。内側も、見込みに斑点模様が集中しながら、全体的にも色のグラデーションに富み、見どころが絶えません。
形としては、沓形のように歪みをつけた形ですが、いわゆる織部に代表されるような沓形ではなく、柔らかな歪み。ロクロで丸く成形した後に、まだ土が柔らかいうちに手で歪めるわけですが、このバランスが難しいです。
うまくいかないと、どうしてもわざとらしい作為の強い茶盌になってしまいますし、もとからその形であったような佇まいを感じる形が美しいと思います。
その為には、もとの歪める前の形の美しさ、歪めるタイミングと力加減が大事になってきますが、この茶盌はそのバランスがうまくいったと感じます。
サイズ 123×110×h75 mm
素材 鹿背(宇治の陶土)
釉薬 透明釉
焼成 玄窯(登り窯)
箱 木箱 ※受注後に制作、約二週間
価格 242,000円(税込)