酒をあまり呑まない私は、酒呑を作るときに茶盌を小さくしたもの。という意識で作ることが多いのですが、この形の月白釉の酒呑は例外です。あまり抹茶の茶盌では作らない形で、口づくりもシャープに薄く挽きます。あえて言うなれば、煎茶碗に近い意識。お酒を少しずつ、舌の上で転がすように楽しんで頂くイメージの口づくり。
登り窯の中で、かなり温度が高くなる火前の部分に入れ、月白釉はよく溶けて素地の土が透けて見えることで紫に近い色味となります。内側の見込には溶けて流れた月白釉が溜まって結晶化し、鮮やかな水色に。そして、外側の腰部には銀彩を施しています。本来、釉薬の上に施す技法である銀彩を素地の土に直接施します。土が銀を吸い、銀の濃さがまちまちになることで、白っぽい部分、少し黒い部分、マットでありながら光沢感のある銀色の部分と表情に変化が出ます。これまでは釉薬と銀彩の部分は重ねずに作って参りましたが、この作品はあえて一部分を重ねることで、紫がかった月白釉と白っぽい銀彩の間に、本来の銀彩の光沢のある銀色がひと筋、入るようになりました。
今の自分の気分を、そのまま作品に込め、以前より明るくなった月白釉銀彩の酒呑をお楽しみください。
サイズ Φ75×h35 mm
素材 宇治の陶土
釉薬 月白釉、銀彩
焼成 玄窯(登り窯)
箱 木箱 ※受注後に制作、約二週間
価格 22,000円(税込)