朝日焼の鹿背の魅力は、登り窯の松割木の炎によって引き出されます。鹿背の表情は、信楽の自然釉や備前の緋襷のように、わかりやすく炎の痕跡を残すものではありませんので、誰が見ても登り窯で焼かれたことが分かるという類のものではありません。
しかしながら、登り窯で焼いたもののうち素晴らしい焼き上がりのものは、電気窯やガス窯では到底再現できない複雑で魅力的な色のグラデーションを見せてくれます。
この鹿背の茶盌は、まさにそういった複雑で幾重にも重なる色のグラデーションを持つ茶盌です。鹿背の土は、朝日焼でも一番長く寝かせた土を使いますがキメ細やかで最も白い土です。その土にイス灰を用いた釉薬を施し焼いた場合、酸化した部分が黄色を呈します。淡い黄色、場合によってはかなり白に近い色ですが、美しい鹿背は、まずこの黄色が美しいのです。そして、橙色、緑から青み掛かった灰色のグラデーションは、窯の中でどのような変化がそれを引き出すのか厳密には分からないほどに奇跡的な色です。一回の窯焚で、こういう茶盌が幾つかでも取れたら、良い窯であったなと思えるもの。
ここまで複雑な色でなくても、美しいと思える茶盌に出会えるのは、窯に入れたもののうち一割ほど。その一割を作り出すために、我々は登り窯を焚きます。
サイズ Φ130×h70 mm
素材 鹿背(宇治の陶土)
釉薬 透明釉
焼成 玄窯(登り窯)
箱 木箱 ※受注後に制作、約二週間
価格 253,000円(税込)