金彩という技法を本格的に自分の作品に取り入れるようになって一年と少し経ちました。
きっかけは二つ。
一つは西陣織の細尾さんにて着物と茶盌の展示会にて着物に合わせて茶盌を制作する機会があり、西陣織における金の表現の多様さに魅力されたこと。陶芸では、金は専ら絵付を華やかに見せる技法として発達してきましたが、西陣織から刺激を受けて、絵ではなくテクスチャとしての金の遣い方の新たな可能性を感じました。
もう一つは、コロナ禍という特殊な環境に長く身を置く中で、より明るさを持った作品を作り届けたいという思いが強くなったこと。月白釉の作品で始めた金彩ですが、一年が経ち、朝日焼のより伝統的な鹿背や紅鹿背の作風でも取り入れたいと思うようになりました。特に『華やかさ』と『静けさ』の共存。を意識して作った作品がこの茶盌です。金彩の華やかさがありながら、その華やかな部分と対比するように紅鹿背の表情は静かな佇まいも醸し出してくれています。
手取りも軽やかで掌の中で、現実感のないような印象さえある一盌。
まだまだ大勢で寿ぐということには遠い新年となるでしょうが、このような茶盌での一服にて、新年を始めて頂ければと思います。
サイズ Φ115×h75 mm
素材 紅鹿背(宇治の陶土)
釉薬 透明釉
焼成 玄窯(登り窯)
箱 木箱 ※受注後に制作、約二週間
Price 275,000 JPY