粉引(こひき)と呼んでいますが、焼物の世界、お茶の世界でのいわゆる粉引とは違い、白化粧を施した焼き締め。です。
月白釉流シの作品で、はっきりとした明るく現代的な雰囲気を持つ白の化粧土を使うようになって、花器であれば花の色が入るので、色のない白の表情のみを生かすのも良いのではないかと、この粉引の作風を制作するようになりました。
登り窯の一部屋目。それも一番前のところに入れることが多いのですが、釉薬が掛かっていなくても舞い散る灰が白化粧のうえに炎の痕跡を残して、白の中に微妙な変化をもたらしてくれます。
あまり強く焦げ過ぎると上品さが失われていきますので、目指すべき雰囲気に辿り着くものは意外と少なくなります。
白化粧は全体に施すのではなく、下部は必ず掛け残すことにしています。
”花は野にあるように”と云いますが、”土”のところを残すことで”野”を感じられるのではないかと思っています。
下部の強めに焦げた土の濃い茶色の表情、対照的に白の部分は灰が被りすぎず閑かな佇まいをみせ、ロクロで引き上げた形は、細かいロクロ目と柔らかな膨らみが優美に感じます。
口の縁が炎によって黒くなり引き締まった印象を作ってくれているのも含めて
可憐な花を引き立てる良い花器となったと思います。
サイズ Φ140×h290 mm
素材 宇治の陶土
釉薬 粉引
焼成 玄窯(登り窯)
箱 木箱 ※受注後に制作、約二週間
Price 154,000 JPY