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朝日焼の土
朝日焼は代々、宇治の陶土にこだわり続けてまいりました。明治時代までは朝日山から土を取っており、朝日焼の窯名もこれに由来します。現在は、朝日山の対岸の茶畑が広がる白川や折居山から土を取っております。朝日焼の命ともいえるこの土は、太古の昔、宇治川の急流が体積してできた粘土層から採取しております。採掘した土は熟成のため50年以上寝かせてから使用します。現在、作陶に使用する土は先祖が掘り起こしてくれたもので、今掘った土は孫の代に使用するために風化させます。この宇治の陶土は柔らかな表情が特徴で吸水性があり、熱伝導性が低いので熱くなりにくい性質を持っています。これがお茶の「うつわ」を制作する土として相性が良い理由です。また、使い込むほど変化のあるのがこの陶土です。「茶の湯」の世界ではそれを「ナレがくる」と云い、焼き上がった段階では八割程度の完成で、あとの二割は使い込むことで「うつわ」が完成するとも云われます。

朝日焼の陶土は焼き上がりの違いにより、三種類に分けられます。

○鹿背

淡い黄と灰色の複雑なグラデーションが特徴の土味。
鹿の背中のような斑点模様も特徴のひとつです。

○燔師

朝日のような、ほのぼのとした橙色(だいだい)の土味。
使って頂くほど変化の多い土です。

○紅鹿背

鉄分が多い分、鹿背より赤黒く発色する土味。

上記のものは透明な釉薬を掛け、自然な土味を大切にしております。それは窯の中の少し低温の場所で綺麗に発色をします。朝日焼では自然の灰釉を調合した釉薬の「うつわ」も制作しております。それは、窯の中で高温になる場所に昔からこの灰釉の「うつわ」を入れて焼いておりました。代により使用する灰釉も少し変わります。

現在、使用する主な灰釉は

○松灰釉

松の鉄分により緑がかった発色するのが特徴。登り窯で使用する薪はすべて赤松なのですが、その灰を釉薬として使用しております。

○月白釉

月白釉の青白色の上に銅の発色による紫の斑文があるものを「鈞窯」と云い、十五世豊斎の弟、弘が「鈞窯」を熱心に研究していた。弘が35歳の若さで他界したため、研究を引き続き十四世と十五世の豊斎が続けました。現在の十六世豊斎はこの月白釉の下地の土に白土を流し三層(土味、白土、月白)になった表情を研究しております。

「朝日焼の歴史」にもございますが、江戸時代後期、朝日焼の八世長兵衛が煎茶文化の「うつわ」を完成させます。初代の頃に日本には磁器を焼成する技術はなく、中国で生まれた磁器の技術は八世の頃より朝日焼に取り込みました。磁器の素地の白さはお茶の色を綺麗に見せます。また、釉薬も下地がより白いほどより綺麗に発色します。朝日焼では独自の釉薬の調合で磁器の「うつわ」を発色の鮮やかさを研究しております。

磁器土のための釉薬

○辰砂

銅を使った釉薬。深みのある血のような赤色が特徴。

○青磁

透明感のある薄青色。

○黄磁

気品のある黄色。

○呉須

力強い紫色。

○青緑

深みのある青緑色。

○鮮緑

鮮やかな緑色。

陶土と磁器の両方の土を用いて作陶をする工房は大変珍しい窯元です。というのは、この陶土と磁器では土の性質や歩んできた文化が違います。朝日焼が両方を使うようになったのは宇治という地域で、「茶の湯」と「煎茶」という異なるお茶の文化の「うつわ」を共に制作し、宇治のお茶と共に歩んできた窯元であるためです。それぞれに持ち味のある特性を生かし、その時代の茶人や茶師の要請に応えていったためです。